国名(英語):Poland; Czech Republic; Switzerland
国名(日本語):ポーランド、チェコ、スイス
論文名(英語):Molecular and Neuroimaging Correlates of Bipolar Disorder: Linking Inflammation, Mitochondria, and Brain Circuitry.
論文名(日本語):双極性障害の分子・脳画像相関:炎症、ミトコンドリア、脳回路を結びつける
大学名・研究機関名(英語):Collegium Medicum, Jan Dlugosz University in Częstochowa; University Hospital Ostrava; Faculty of Medicine, University of Ostrava; International Journal of Molecular Sciences
大学名・研究機関名(日本語):ヤン・ドゥウゴシュ大学チェンストホヴァ校 Collegium Medicum、オストラヴァ大学病院、オストラヴァ大学医学部、International Journal of Molecular Sciences
発表年(英語):2026
発表年(日本語):2026年
出典:PubMed / MDPI
本文
双極性障害をめぐる大きな誤解のひとつは、家庭の中で起きる強い怒り、止まらない口論、衝動的な行動を、本人の「性格」だけで説明してしまうことです。もちろん、家庭内で「暴言」や「暴力」が起きた時には、まず安全を守ることが必要です。しかし、そこで終わってしまうと、なぜそのような言動が起きたのか、どのように再発を防ぐのか、家族が何を理解すればよいのかという一番重要な部分が見えなくなります。
今回紹介する2026年の論文は、双極性障害を、炎症、ミトコンドリア機能、脳画像、脳回路という複数の角度から整理した総説です。論文は、双極性障害を単なる気分の波ではなく、免疫、代謝、エネルギー産生、神経ネットワークが関わる「病気」として見ています。この視点は、本ジャーナルが伝え続けている「暴言」や「暴力」は本人の「性格」だけではなく、病気の「症状」として理解する必要がある、という考え方と強く一致します。
英語原文: “mitochondrial dysfunction”
日本語訳: 「ミトコンドリア機能障害」
ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーを作る重要な器官です。脳は大量のエネルギーを必要とするため、ミトコンドリアの働きが乱れると、神経細胞の安定性、情報伝達、感情の調整にも影響が出ます。論文では、双極性障害において酸化ストレス、カルシウム調節の乱れ、シナプス機能の乱れ、神経細胞の脆弱性などが関係すると説明されています。
これは、家族が目の前で見る「怒りっぽさ」や「急な反発」を、単に短気、わがまま、思いやりの欠如として決めつける理解とは違います。脳が疲弊し、睡眠が崩れ、エネルギー代謝や神経回路が不安定になる時、普段なら抑えられる言葉や行動が抑えにくくなることがあります。その結果として「暴言」や「暴力」に見える行動が出る場合、必要なのは人格攻撃ではなく、病状の把握、治療、睡眠リズムの安定、家族の記録と協力です。
英語原文: “cortico-limbic networks regulating emotions”
日本語訳: 「感情を調整する皮質・辺縁系ネットワーク」
この論文で特に重要なのは、双極性障害を脳内ネットワークの問題として整理している点です。前頭前野、前部帯状皮質、扁桃体、海馬などは、感情、衝動、記憶、危険判断、対人反応に深く関わります。これらの領域やネットワークに構造的・機能的な変化がある場合、怒りや焦燥を抑える力、相手の言葉を落ち着いて受け止める力、危険な判断を止める力が弱くなることがあります。
家庭の中では、その変化は医学用語ではなく、強い口調、しつこい反論、突然の怒り、浪費、睡眠不足、物に当たる行動として見えます。だからこそ家族は、「また性格が出た」と受け止めるだけではなく、「睡眠は何時間だったか」「服薬は続いているか」「急に活動量が上がっていないか」「怒りが続く時間は長くなっていないか」「混合状態のような焦燥がないか」を記録することが大切です。
この記録は、本人を責めるためのものではありません。主治医に正確に伝え、治療を早めに調整し、家庭内の衝突を減らすためのものです。双極性障害では、本人も家族も傷つきやすくなります。だからこそ、「暴言」や「暴力」を起こした本人を永久に「悪い人」と決めつけるより、病気の「症状」として早く医療につなげることが、家族全体の回復につながります。
英語原文: “BD is not merely an affective disorder”
日本語訳: 「双極性障害は単なる感情の病気ではない」
論文は、炎症や免疫の乱れも双極性障害の理解に重要だと述べています。炎症性サイトカイン、ミクログリア、酸化ストレス、ミトコンドリア機能の低下は、脳の感情調整回路に影響します。これは、双極性障害が「気持ちの持ちよう」ではなく、身体と脳の複数のシステムが関係する「病気」であることを示しています。
本ジャーナルがこの論文を紹介する理由は明確です。双極性障害に伴う「暴言」や「暴力」を、本人の「性格」として憎み続ける社会では、家族も患者も救われません。必要なのは、症状の背景にある脳、細胞、炎症、睡眠、薬物療法、家族関係を総合的に理解することです。家族が病気を学び、主治医に相談し、再発サインを共有することで、家庭崩壊ではなく回復へ向かえる可能性があります。
双極性障害は、近年の研究により、遺伝子、ミトコンドリア、炎症、脳内ネットワーク、睡眠リズム、神経伝達が複雑に関わる疾患として理解されつつあります。だからこそ、昔ながらの「性格が悪い」「本性が出た」という言葉だけでは不十分です。「暴言」や「暴力」を放置するのではなく、「症状」として早く見つけ、治療につなげ、家族の協力で再発を減らしていく。その方向へ社会全体の理解を進めることが必要です。
【最後に】
双極性障害という精神疾患は、近年やっと、遺伝子の異常や脳内ネットワーク異常等が発見されたばかりの、未だに誤解や偏見、差別が根強い「病気」です。家族の「理解」が最も重要であり、家族は、「暴言」や「暴力」への「憎しみ」は時に「憎しみの暴力」にもなり、お互いを傷つけたり、お互いが「不幸」になるなどして、「離婚」や「家庭崩壊」へと繋がるケースがある一方で、「家族の理解と協力」によって「幸福」を取り戻す家族もあります。お子さんがいるご家庭では、なおさら、離婚や家庭崩壊の道を「憎しみ」と共に選択するよりも、双極性障害という「病気」や「症状」を正しく「理解」することによって「幸福」を取り戻す道が、お子さんの将来への影響にとっても、家族の「幸福」にとっても、最善の選択といえるでしょう。本「双極性障害ジャーナル」では、1組でもそういった家族の「幸福」を願い、また、「離婚」や「家庭崩壊」を減らすために記事公開活動や、睡眠リズムチェックシートシステムなどの独自SaaSシステムの開発等に取り組んでおります。

