2020-2026年 米国大学・米国研究機関が関わる英語論文から、「双極性障害と暴力・攻撃性・衝動的攻撃」に関係する論文抜粋。※著作権の関係で、英語原文は短い引用に限定し、その下に日本語訳と解説を付けています。

米国論文から見る「暴言・暴力」は、本人の「性格」ではなく病気の「症状」

双極性障害における暴言、怒り、攻撃的な行動は、単純に「性格が悪い」「本性が出た」と片づけられるものではありません。もちろん、暴力や脅迫がある場合は安全確保が最優先です。しかし、近年の米国の研究では、双極性障害に関連する攻撃性や衝動性が、気分エピソード、脳回路、過去のトラウマなどと関係することが示されています。

1. Yale School of Medicine / University of Pennsylvania, 2022

論文名:Rethinking “Aggression” and Impulsivity in Bipolar Disorder
大学名:Yale School of Medicine、University of Pennsylvania Perelman School of Medicine
発表年:2022年
出典:PubMed / PMC

英語原文:
“can lead to misconceptions with negative consequences including stigma”

日本語訳:
「スティグマを含む有害な誤解につながりうる」
大学名:イェール大学医学部、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部
発表年:2022年

この論文は、双極性障害における「aggression=攻撃性」と「impulsivity=衝動性」を区別して考える必要があるとしています。重要なのは、攻撃性の尺度が必ずしも「他人への暴力」だけを測っているわけではないという点です。怒りの爆発、対人関係の混乱、自己攻撃性、自傷、感情調整の困難なども含まれます。

つまり、双極性障害の患者に見られる怒鳴り声、激しい口論、衝動的な言動を、ただちに「暴力的な人格」と決めつけることは、医学的にも不正確です。この論文では、双極性障害の人では攻撃性・衝動性のスコアが高く、幼少期の虐待、うつ症状、物質使用障害、自殺企図などとも関連していたと報告されています。

さらに、攻撃性スコアは眼窩前頭皮質や島皮質など、感情や社会的行動の調整に関わる脳領域の灰白質体積低下とも関連していました。これは、「暴言や暴力的言動は性格だけの問題ではなく、脳の感情調整ネットワークの問題として理解すべき」という本ジャーナルのテーマと強く一致します。

2. Baylor College of Medicine / University of Texas Health Science Center, 2021

論文名:Cortical Correlates of Impulsive Aggressive Behavior in Pediatric Bipolar Disorder
大学名:Baylor College of Medicine、University of Texas Health Science Center at Houston
発表年:2021年
出典:PubMed / Frontiers

英語原文:
“Impulsive aggression represents a frequent characteristic of pediatric bipolar disorder”

日本語訳:
「衝動的攻撃性は、小児双極性障害にしばしば見られる特徴である」
大学名:ベイラー医科大学、テキサス大学ヒューストン健康科学センター
発表年:2021年

この研究は、小児・青年期の双極性障害における衝動的攻撃性と脳皮質の関連を調べたものです。対象は双極性障害の若者23人と健康対照23人で、攻撃性質問票と3テスラMRIを用いて評価されました。

結果として、双極性障害の若者では「怒り」と「敵意」のスコアが高く、感情ネットワーク、前頭頭頂ネットワーク、帯状弁蓋ネットワークなどに関わる領域で皮質の薄さが見られました。これらは感情処理、注意、実行機能、衝動抑制に関係する領域です。

この研究が示すのは、子どもや若者の怒り・暴言・攻撃性を「しつけ不足」「性格が荒い」とだけ見る危険性です。遺伝子の異常やその他の異常、脳内ネットワーク異常、脳の発達や感情調整機能の問題として理解し、早期治療、家族理解、家族協力などの環境調整につなげることがとても重要です。

3. Duke University / Yale University, 2020

論文名:Gun-Related and Other Violent Crime After Involuntary Commitment and Short-Term Emergency Holds
大学名:Duke University School of Medicine、Duke University、Yale University School of Public Health
発表年:2020年
出典:Duke Scholars / JAAPL

英語原文:
“violence risk in psychiatric patients is not necessarily inherent or persistent”

日本語訳:
「精神疾患患者の暴力リスクは、必ずしも本質的または持続的なものではない」
大学名:デューク大学医学部、デューク大学、イェール大学公衆衛生大学院
発表年:2020年

この論文は、双極性障害、統合失調症スペクトラム障害、大うつ病を含む重い精神疾患の成人77,048人を対象に、銃関連およびその他の暴力犯罪リスクを調べた研究です。双極性障害だけに限定した研究ではありませんが、双極性障害を含む大規模な米国データとして重要です。

この研究の最も大切な点は、暴力リスクを「その人の本質」として固定的に見ないことです。研究者たちは、暴力リスクは病状悪化、危機状態、短期入院、治療アクセス、物質使用、社会的要因などにより変動すると説明しています。

4. UNC / Johns Hopkins / SUNY Stony Brook / Virginia Commonwealth University, 2023

論文名:Developing Empirical Latent Profiles of Impulsive Aggression and Mood in Youths across Three Outpatient Samples
大学名:University of North Carolina at Chapel Hill、Johns Hopkins University、State University of New York at Stony Brook、Virginia Commonwealth University
発表年:2023年
出典:PubMed

英語原文:
“AIR may distinguish a subset of youth”

日本語訳:
「衝動性と反応性を伴う攻撃性は、若者の一部の群を区別する可能性がある」
大学名:ノースカロライナ大学チャペルヒル校、ジョンズ・ホプキンス大学、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校、バージニア・コモンウェルス大学
発表年:2023年

この論文は、衝動的で反応的な攻撃性を、躁症状、抑うつ症状、規則違反、自傷などと合わせて分析した研究です。双極性スペクトラム診断や家族歴を含む若者のデータも扱われています。

この研究から分かるのは、攻撃性は一枚岩ではないということです。躁状態に伴う怒り、ADHDやODDに近い外在化行動、家族葛藤に反応した爆発、自傷に向かう自己攻撃性など、背景は異なります。

だからこそ、暴言や暴力的な行動を見たときに、「性格が悪い」という一語で片づけるのは危険です。医学的には、どの症状群に属するのか、躁状態なのか、混合状態なのか、衝動性なのか、併存症なのか、家庭内ストレスなのかを見分ける必要があります。

まとめ:「暴言・暴力」は「本性」ではなく、評価と治療が必要な「症状」である

米国の近年の論文を総合すると、双極性障害に関連する暴言、怒り、攻撃性、暴力的行動は、単純な性格問題ではありません。脳の感情調整回路、衝動性、躁状態・混合状態、幼少期トラウマ、物質使用、併存症、家族葛藤など、複数の要因が重なって現れる症状として理解する必要があります。

家族が傷ついた場合、安全確保は絶対に必要です。しかし、その後に「この人は悪人だ」「本性だ」と見捨て、離婚や家庭崩壊につながるよりも、家族が理解し、助け合う事で、幸せを築き上げている家族も実際に増えています。それは、順天堂大学や東京大学の研究により、遺伝子の異常や脳内ネットワーク異常等が発見され、以前よりも、双極性障害への差別や偏見が減り、医療機関の対応も変わってきている事も要因の一つにあげられています。

必要なのは、
「暴力」を「症状」として理解し、医療機関に相談すること。
そして、家族は、「症状」として「理解」し、助け合って共に治療に寄り添うこと。
自己判断でやめずに治療を継続すること。
家族が「病気」を学び、再発時等の対応方法を身につけること。

双極性障害の「暴言」や「暴力」を「性格」として憎み続ける「差別」から、「症状」として理解し、「治療」と「幸福」につなげる社会へ。これこそが、双極性障害ジャーナルが広めたいテーマなのです。

【最後に】

双極性障害という精神疾患は、近年やっと、遺伝子の異常や脳内ネットワーク異常等が発見されたばかりの、未だに誤解や偏見、差別が根強い「病気」です。家族の「理解」が最も重要であり、家族は、「暴言」や「暴力」への「憎しみ」は時に「憎しみの『暴力』」にもなり、お互いを傷つけたり、お互いが「不幸」になるなどして、「離婚」や「家庭崩壊」へと繋がるケースがある一方で、「家族の理解と協力」によって「幸福」を取り戻す家族もあります。お子さんがいるご家庭では、なおさら、離婚や家庭崩壊の道を「憎しみ」と共に選択するよりも、双極性障害という「病気」や「症状」を正しく「理解」することによって「幸福」を取り戻す道が、お子さんの将来への影響にとっても、家族の「幸福」にとっても、最善の選択といえるでしょう。本「双極性障害ジャーナル」では、1組でもそういった家族の「幸福」を願い、また、「離婚」や「家庭崩壊」を減らすために記事公開活動や、睡眠リズムチェックシートシステムなどの独自SaaSシステムの開発等に取り組んでおります。

筆者紹介:Satoru Watanabe

筆者:Satoru Watanabe : 精神医療ジャーナリスト(双極性障害ジャーナリスト)兼SaaS開発者

略歴:12歳よりプログラミング講座を受講し、システム開発を開始。2005年に家族が乖離性パーソナリティー障害だと知り、ジャーナリズムを学びながら精神医療ジャーナリスト活動を開始する中で、双極性障害患者が、病気の症状により家族へ暴言や暴力をふるう事で、家族から病気への理解が得られずに離婚や家庭崩壊になるケースが多く、「差別」や「偏見」も多い事から、双極性障害という病気をもっと知ってもらう事を目的として、世界初、そして、日本初の双極性障害に特化したジャーナリスト「双極性障害ジャーナリスト」となり、執筆活動を行いながら、2026年遂に、本ジャーナルを開始。又、2005年より医療分野に特化したシステム開発を本格的に開始した後に、ヴィジュアル電子カルテシステム等の最先端技術を用いた開発を経て、国内外の一般企業や医療機関向けのSaaS開発、及び、システム開発を行う中、睡眠リズムチェックシートSaaSシステムを非営利目的にて2026年に開発し、全国の精神科病院やクリニック等の医療機関へ100%完全無償での提供を行っている。(初期費用、導入コスト、管理費等、すべて完全に無償。及び、さまざまな電子カルテシステムと接続可能、及び、患者独自で自宅やコンビニでプリントアウト等も可能)

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