退役軍人の双極スペクトラム障害における衝動性と攻撃性:2025年米国論文から読む認知機能と「症状」

国名(英語):United States
国名(日本語):米国
論文名(英語):Neurocognitive Functioning and Impulsivity in Veterans With Bipolar Spectrum Disorders
論文名(日本語):双極スペクトラム障害を持つ退役軍人における神経認知機能と衝動性
大学名・研究機関名(英語):James J. Peters VA Medical Center; Icahn School of Medicine at Mount Sinai
大学名・研究機関名(日本語):ジェームズ・J・ピーターズ退役軍人医療センター、マウントサイナイ医科大学アイカーン校
発表年(英語):2025
発表年(日本語):2025年
出典:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41159849/

本文

この2025年の米国論文は、双極スペクトラム障害を持つ退役軍人を対象に、神経認知機能、衝動性、攻撃性、自殺企図との関係を調べた研究です。双極性障害における「暴言」や「暴力」を、本人の「性格」ではなく、認知機能と衝動制御の「症状」として考えるうえで非常に重要な内容です。

研究では、自殺企図歴のある双極スペクトラム障害群、自殺企図歴のない双極スペクトラム障害群、健康な退役軍人群を比較しています。評価には、認知機能検査、衝動性尺度、衝動的・計画的攻撃性尺度が使われました。つまり、攻撃性は道徳論ではなく、測定可能な臨床指標として扱われています。

英語原文: “neurocognitive dysfunction and impulsivity”

日本語訳: 「神経認知機能障害と衝動性」

結果として、自殺企図歴のある双極スペクトラム障害群では、作業記憶や言語学習が低下していました。また、衝動的攻撃性と計画的攻撃性のスコアも高く、認知機能の低下と攻撃性の関連が示されています。これは、怒りや攻撃的行動の背景に、脳の情報処理や記憶の問題が関わりうることを意味します。

家族の場面に置き換えると、本人が話の流れを保てない、相手の言葉を途中で誤解する、過去の出来事を極端に解釈する、感情が高まると考えを整理できない、ということが起こります。その状態で口論が続くと、「暴言」や「暴力」に近い行動へ進みやすくなります。これは「性格が悪い」ではなく、神経認知機能と衝動性の「症状」として見る必要があります。

作業記憶とは、今聞いたことを頭の中に保持しながら考える力です。これが低下すると、相手の話を最後まで聞き、全体を整理して反応することが難しくなります。家庭の会話では、本人が一部の言葉だけに強く反応し、怒りが急激に高まることがあります。そこで「暴言」が出ると、家族は人格を責めたくなりますが、背景には認知機能の問題がある場合があります。

論文では、神経認知機能の問題が攻撃性の背景になりうると述べられています。この表現は、本ジャーナルのテーマと一致します。攻撃性は本人の本性ではなく、双極性障害に関連する脳機能、衝動性、気分状態、自殺リスクと結びついて現れる「症状」です。

英語原文: “Impulsive/Premeditated Aggression Scale”

日本語訳: 「衝動的・計画的攻撃性尺度」

家族ができる対応としては、興奮時に長い議論をしないこと、責める言葉を重ねないこと、本人が落ち着いた後に短く事実を共有すること、主治医に認知機能や衝動性の問題を伝えることが重要です。家庭での記録は、医師が診察で把握できない「症状」の時間経過を補います。

また、この研究は自殺リスクとも関係しています。「暴言」や「暴力」が見える時、家族は外向きの攻撃だけに目を奪われます。しかし双極性障害では、攻撃性が自分自身へ向かうこともあります。強い怒り、絶望、衝動性が重なると、自傷や自殺企図のリスクが高まることがあります。だからこそ、攻撃性を「性格」として切り捨てず、「症状」として医療へつなぐことが必要です。

退役軍人を対象にした研究であっても、家庭に活かせる教訓は明確です。認知機能と衝動性が崩れると、人は普段の自分とは違う反応をします。双極性障害では、その崩れが躁状態、混合状態、うつ状態、睡眠不足、服薬中断と重なり、「暴言」や「暴力」として現れることがあります。

英語原文: “underlie aggression”

日本語訳: 「攻撃性の背景となる」

この米国論文は、双極スペクトラム障害の攻撃性を、神経認知機能と衝動性の観点から測定しています。「暴言」や「暴力」を本人の「性格」と断定するのではなく、脳機能と病気の「症状」として理解し、治療と家族支援に結びつけるための重要な根拠です。

【最後に】

双極性障害という精神疾患は、近年やっと、遺伝子の異常や脳内ネットワーク異常等が発見されたばかりの、未だに誤解や偏見、差別が根強い「病気」です。家族の「理解」が最も重要であり、家族は、「暴言」や「暴力」への「憎しみ」は時に別の「暴力」にもなり、お互いを傷つけたり、お互いが「不幸」になるなどして、「離婚」や「家庭崩壊」へと繋がるケースがある一方で、「家族の理解と協力」によって「幸福」を取り戻す家族もあります。お子さんがいるご家庭では、なおさら、離婚や家庭崩壊の道を「憎しみ」と共に選択するよりも、双極性障害という「病気」や「症状」を正しく「理解」することによって「幸福」を取り戻す道が、お子さんの将来への影響にとっても、家族の「幸福」にとっても、最善の選択といえるでしょう。本「双極性障害ジャーナル」では、1組でもそういった家族の「幸福」を願い、また、「離婚」や「家庭崩壊」を減らすために記事公開活動や、睡眠リズムチェックシートシステムなどの独自SaaSシステムの開発等に取り組んでおります。

筆者紹介:Satoru Watanabe

筆者:Satoru Watanabe : 精神医療ジャーナリスト(双極性障害ジャーナリスト)兼SaaS開発者

略歴:12歳よりプログラミング講座を受講し、システム開発を開始。2005年に家族が乖離性パーソナリティー障害だと知り、ジャーナリズムを学びながら精神医療ジャーナリスト活動を開始する中で、双極性障害患者が、病気の症状により家族へ暴言や暴力をふるう事で、家族から病気への理解が得られずに離婚や家庭崩壊になるケースが多く、「差別」や「偏見」も多い事から、双極性障害という病気をもっと知ってもらう事を目的として、世界初、そして、日本初の双極性障害に特化したジャーナリスト「双極性障害ジャーナリスト」となり、執筆活動を行いながら、2026年遂に、本ジャーナルを開始。又、2005年より医療分野に特化したシステム開発を本格的に開始した後に、ヴィジュアル電子カルテシステム等の最先端技術を用いた開発を経て、国内外の一般企業や医療機関向けのSaaS開発、及び、システム開発を行う中、睡眠リズムチェックシートSaaSシステムを非営利目的にて2026年に開発し、全国の精神科病院やクリニック等の医療機関へ100%完全無償での提供を行っている。(初期費用、導入コスト、管理費等、すべて完全に無償。及び、さまざまな電子カルテシステムと接続可能、及び、患者独自で自宅やコンビニでプリントアウト等も可能)

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